椅子と机と文具についての考察

ウイスキー片手に振り返る僕らの日々

断片

"東京テレポート"

そこに水色とピンクがヒラヒラと風を受けていた。
ビビッドなカラーフィルタの光が放たれては遮られ、また放たれては遮られを繰り返す。
ちょきちょきとビニールテープを切り刻んでいく、輪っかを作る、カーテンを引き剥がす。
貴女を思い出す。
 
誰もいない東京テレポートだった。
羽虫みたいな霧雨が髪の毛を少しだけもさっとさせて、オレンジの光が水を半滴垂らしたくらいに滲んで、どこまでもどこまでも続いていた。
サンクスで梅酒とスミノフを買って僕らはフラフラと歩いた。まだ17とか18とかそれくらいだった。観覧車が回転していた。観覧車が誰を乗せることもなく、自らの意思で回転していたんだ。
チカチカと点滅する電球だけが五月蝿かった。
 
さっきまであそこにいたのが嘘みたいだねって言って、でもそんな会話もまだ自分達が中心のストーリーの一部みたいで観覧車に乗ってた時の続きみたいに感じていたと思う。実際にはそれは本当だった。みんな。
 
川は続いていて、橋が何本かかかっていて、やがて河口が広がって海になっていた。工場のライトはずっと点灯していたし、夜半に海を渡る船が何隻かあった。異邦人は踊って踊って、踊り明かすしかなかった。それがこの世界の全てに思えた。
 
喉がかわいた。早くこの酒を飲みたい、けど、君はゆっくり歩いている。
早くこの酒が飲みたい、早くこの酒が飲めれば、早くこの酒を飲まなくては…
観覧車の君は本当に綺麗だった。横髪が口元に触れて肩に手を回した時、僕らは本当だった。
 
街灯が照らす夜半、光と影のコントラストが次第に輪郭を帯びてくる。
今、君を見つけられるだろうか。